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星空シアター

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天窓から星空が見えるホームシアターでの映画鑑賞

ドラマW「イヴの贈り物」 ノスタルジック

ドラマW「イヴの贈り物」 ノスタルジック_c0099919_917156.jpg
◆WOWOW放送。ハイヴィジョン+2ch音声。29インチモニターにて鑑賞。(D50QJがHDMIを認証せず!)
◆しっかりしたドラマ作りである。監督は佐藤純弥。キイハンターTVシリーズから「人間の証明」「野生の証明」といった角川映画,そして「男たちの大和」とTVも映画大作も手がける,フットワークのいい監督さんだ。監督歴は巨匠の域にある。そんな監督が,一人の男が死に向かう経過を,しっかりしたドラマ作りで構築していく。

◆その男「館ひろし」はこれまでのニヒルのみのキャラから変貌を遂げようとしている。先週まで放送されていた「パパとムスメの7日間」では,心と体がムスメと入れ替わってしまうという難しい役柄を軽妙に違和感なく演じていた。この「パパと・・・」でもやわらかいサラリーマンそして父親役が観るものを安心させてくれた。
 「イヴ・・・」でも,エリートサラリーマンではあっても,ぎらぎらした強硬さは息を潜めて,会社組織へのあきらめという感情を表現する。娘の病死により,妻との間も離れ(まことに子はかすがいとはよくいったもの),男の周りは崩壊を始めている。そんな中で出会った19歳の女性。

◆このヒロインを,貫地谷しほりはうまく演じている。彼女は「スゥイングガールズ」「夜のピクニック」などでの,元気なコメディアンヌという印象のみが強かったが,本作では,元気で明るく,まじめだが薄幸の少女を好演する。

◆男は少女に,自分のなくした娘を重ねるが,少女は男を男性として惹かれていく。この隙間が悲劇を呼ぶところが痛い。特に河津温泉での夜のシーンはそれをはっきりと象徴する。少女は男に抱かれようとするが,男は「わが娘」を抱けるわけもない。生娘だった少女は,あこがれの男に抱かれることなく,取り立て屋のやくざにレイプされ,風俗の仕事にまで身を落としていってしまう。たった一人の母親も亡くし,少女は思い出の温泉宿で一人宿泊し,自殺してしまう。男は友人から「助けてくれと何度もサインを出していたのに,なぜそのとき助けなかった」と指摘され自分のふがいなさを痛感する。そして,単独の復習を実行し,自らも刺され,息絶える。

◆このなんとも悲痛な話を,紗のかかったような美しい映像で描きとる。また,白飛びする光学処理で薄幸の少女のわずかな幸せの輝きを表したり,色がなくなりそうになる処理で過去と現在をわかりやすく表現する。
 音楽も宇崎竜童のけだるいなジャズが色を添え,全体が少し前のノスタルジックな映画を彷彿とさせてなつかしい。(ただし,母親の交通事故シーンは,黒澤清なみにリアルである)

◆脇の石倉三郎や妻役の手塚理美も見事である。それぞれのキャラクターがよく描けている。特に石倉の過去が,「拳銃」を手に入れる複線となり重要な役を見事に演じた。夫の真の胸の内を知らずに,タンゴを踊る姿は哀れである。

◆様々な監督を起用するドラマW。この物語を佐藤監督は丹念なドラマの積み重ねで,ノスタルジックに撮りきった。心に中にずっしりと残る重厚な作品に仕上がっているといえる。
by samon0814 | 2007-08-26 09:02 | ドラマ

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